先輩メシ


目次
Specialダイジェスト
第1話:「先輩メシ」は、こうして生まれた。
第2話:先輩を越えるのは、後輩の仕事だ。
第3話:自分という「木」を育てる人を増やしたい。

 

自分の中に問いを持ちなさい。

阿部先輩:コピーライター6年目の頃、クリープハイプという僕が大好きなロックバンドと仕事をさせてもらったんです。そのときに僕が仕事しながら意識したことがあって。「好きを仕事にする」ということは、テーマとして色んなところで語られますが、単発で終わらせちゃいけないと思うんです。自分が好きだからボランティア的にやらせてもらうってことは多分できることだと思うんですけど、そこでちゃんと関係を作って、その先に仕事として一緒にやっていけるかっていうのがすごく大事なことだと。そういう信頼関係を築くことこそ尊いと思っています。

僕がどうやってそういう関係を作っていったかというと、大学のクラスメイトに松居大悟という映画監督がいて。彼がクリープハイプのミュージックビデオを作っていた。ミュージックビデオをひとつなぎにして映画になりました、とニュースを見た時、連絡して、試写を見て、企画書をつくってプレゼンしたんです。僕も好きでしたし、友人がやっていることだったので、無償で。入口はそうですけど、その先にもう一歩踏み込んで、例えばアートワークを一緒にやりたいだとか、広告宣伝こういう風にしましょうだとか、いつか仕事にできると思っていたんです。

提案したい!と思いさえすれば、どこかで誰かがつながってるんです。ユニバーサルミュージックの担当ディレクターの方と、会社の先輩がつながっていたので、その先輩に繋いでもらって、プレゼンしに行きました。「クリープハイプの音楽を、国民的音楽にするために。」という提案を。そこからですね、仕事を一緒にさせてもらったのは。渋谷の交差点にちょっと変わった屋外広告を出したり、ジャケットのアートワークを作ったり。今でも関係は続いています。

R25の創刊10周年プロモーションのときは、30歳をテーマにした話題作りをしようとなりました。自分の中で直感的につながりました。当時30歳になったタイミングのクリープハイプの尾崎さんに曲作りをお願いしよう!と。同世代の人が歌う同世代を応援するテーマソングを、自分たちの気持ちを代弁してくれるような曲を書いてくださいました。

音楽の仕事をするうえで、音楽関連の仕事で活躍している先輩にどうすればいい仕事ができるようになるんですかって聞いたことがあるんですよ。そのときに先輩が「自分の中に問いを持ちなさい。」と言ってくれて。「とにかくジャンルを選ばずにライブに足を運ぶ。現場で体感すると、問いが生まれる。場数を踏んでいくと、問いが洗練されていく。その問いをアーティスト側と共有することが大事。すぐに「俺の答え」を出したがる人もいるけど、それは誰も巻き込んでいかない」と。先輩は「答え」というのは育てていくものなんだっていうことを言ってくれて。問いっていうのはすごく大事なんだなと思ったんですね。

"なぜなんだろう、どうしてだろう、なんでそれをやるんだろう"と、自分が現場から感じ取って考えて、答えを持つ、答えを育てていくことが大事だと。僕は「自問自答の数は言葉の濃さになる」ということを思っています。繰り返し繰り返し自分の中で問うということが、その人の言葉を濃いものにしていくんじゃないかというふうに思ってます。

問いを洗練させていくのに大切なのは、斜めに構えず、正面から見る、ということ。たとえばCMや映画をみたときに、プライドや知識とか知見とかがありすぎる人って、けっこう斜に構えて見ちゃうと思うんですよね。評論しちゃうというか。

丸橋:はい。

阿部先輩:でも本当に大事なのは、それがどういう意図でつくられているのかっていう、真裏を想像しておくこと。それを自分の中で言語化しておくこと。そういうことをその先輩から学びました。

人を動かすのは、技術じゃなくて、たぶん温度だ。

阿部先輩:僕が意識していることに、上に言いたいことがあるなら愚痴にしないで提案にしたほうがいいということがあります。会社で不満に思うこととか、みなさんもちょっとどうなんだろうなと思うことって当然ながらあると思うんです。そういうときに愚痴ってるだけじゃ何も解決しないんで、提案しに行くマインドなり姿勢がいいなと。コピーライター7年目になったあたりなんですけど、社長向けに企画書を書いたことがあって。

丸橋:えー!!社長にですか!

阿部先輩:そうそう。今日内容は持ってきていないですが、モニターに映っているのは抜粋で。ただ、社長にいきなり持って行くと、上司のはしごを飛ばしちゃうことになるんで、ちゃんと仁義を切っておかなければいけないと思って、局長に話しに行ったんですよ。本気の言葉は無視されないですよね。そういう熱のかたまりみたいなものはぶつけた方がいいなと。本気の思いを届けると、相手の自分を見る目は確実に変わるんです。

企画書を見た局長から、「わかった、お前の気持ちはわかったけど、今のこの企画書だと社長にランチをおごってもらうぐらいしかできないと思う。もっと練って、もっと実績をちゃんと作ってから持って行ったほうがいいよ。」ということを言ってもらいました。

その手紙の様な企画書は結局社長に届けはしなかったんですが、それ以降局長と何かあるたびに報告とか相談を気軽にできる間柄になることができました。その報告の中でアドタイに書いていた記事「先輩から後輩へ伝えたかったこと」を読んでもらったことがありました。局長から返信いただいたメールが僕の心に残ってます。

「メール送ってくれてありがとう。あべこーらしい情熱のこもった文章でした。人を動かすのは、技術じゃなくて、たぶん温度だ。頑張って欲しい。」という返信で、はっとしました。なんかこう血の通った仕事をちゃんとしないといけないなというか。仕事の立場とかはさておき、本当のところどう思ってるんですかというスタンスを忘れてはいけないですし、仕事をする上で、心の温度がある働き方を常にしていかなきゃいけないなと思いました。

仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。

阿部先輩:「企画でメシを食っていく」っていう講座を2015年に立ち上げました。これは丸橋くんや、今日ここに来てくれた人の中にも生徒が来てくれてます。本当にいい時間を過ごすことができて、こういう卒業証書といってアルバムをつくったりとかして。

丸橋:いやー、持ってきてくださって。この卒業証書をひとりずつに手渡してくれて。最後のページに阿部さんからのメッセージが書いてあって。

阿部先輩:これ70冊か、これ全部自腹でつくって(笑)

丸橋:ありがとうございます。形になると全然違いますよね。

阿部先輩:卒業証書を作ることで返ってくることが絶対大きいと思って。こういうときに「待っていても、はじまらない。」っていう考えをすごく大事にしてて、こういうものがあったらいいのになと思ったときに、待ってちゃいつまでもそれは生まれないですよね。

丸橋:いやー本当にそう思う。

阿部先輩:待っていても、なにも出来上がってこない。だったら自分が作ろうってことで。その原点は、「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。」という言葉なんです。

丸橋:そこに帰ってくるんですか……。

阿部先輩:そうなんです。少しだけ話をしたいと思うんですけど、電通の4代目社長吉田さんの「鬼十則」っていう言葉があって。仕事に取り組んだら完遂まで離すな!みたいな強いものもあるんですけど、あれは、ご自身が自分を奮い立たせるために残した言葉なんだそうです。社員にそれを働き方のこととして読ませるっていう気は全くなくて。鬼十則の「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。」っていう言葉は、僕は仕事をつくる上で1番大事なことだなと思ってます。吉田社長のように、自分の言葉を自分の働き方に反映させていきたいなというふうに思ってます。 最後に、「渦中の価値」っていうのがすごくあるなと思ってます。渦中、うずまく波の中に自分がいるっていうことを前向きに捉えなくちゃいけないと。情報が飛び交って混沌としてる時代で、そのときに感じたことをちゃんと残していかなきゃいけないと思ってます。

以上が、先輩からもらった10の言葉です。

木のような人間でありたい。

阿部先輩:まとめ的なことを言うと、先輩メシは「先輩コース」というところで出会った後輩たちが作ってくれたのが嬉しくて。(先輩メシの運営メンバーは宣伝会議の講座の同期です) 僕は仕事をするときに「木」をイメージすることがあって。それは「木のような人間でありたい」って例えなんですけど、自分が一生懸命働いて幹を太くして、やがて栄養が枝に行き、葉に行き、春になったら実になって、それを食べにくる人がまた集まっていって、枝葉を伸ばして他の人とどんどんつながっていく。自分という木を育て始める人が増えていけばいいな、そういう広がりが少しでもできるといいなと。

まさしくそうしてくれてるのがめちゃくちゃ嬉しかったです。人は偶然人と出会うわけじゃないなと思ってて、今日もFacebookを見たり誰かに誘われたり、なんか豚汁うまそうだなって来た人が…

丸橋:50人ぐらいですか。

阿部先輩:すごいことだと思うんですよね。何かこれからしようとか、何かできたらいいなと思ってる人が集まってることは価値があるなと。そういう人たちがここで出会ってまた何か生まれていくといいなと。そういうふうに思っています。

阿部先輩が“先輩からもらった10の言葉”
8「自分の中に問いを持ちなさい。」
9「人を動かすのは、技術じゃなくて、たぶん温度だ。」
10「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。」

 

阿部先輩の記事はこれで終了です。
伝えたいことの熱量、トークショーまでの準備の姿勢が本当にすごくて、多くのことを学ばせていただきました。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。

阿部先輩が“先輩からもらった10の言葉まとめ”
1「個人の限界はないけど、企業の限界はある」
2「テニスと一緒で、ボールが来たら打ち返す」
3「君には営業のほうが向いてるよ。」
4「良かったな。また、コピーうまくなるな。」
5「広告とは応援である。」
6「勝手にテコ入れする。」
7「弟子は師匠を越えるものだからね。」
8「自分の中に問いを持ちなさい。」
9「人を動かすのは、技術じゃなくて、たぶん温度だ。」
10「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。」

ライター:戸谷、杉田、濱口
この記事は2018年6月7日に公開されたものです。